♯ジェリービーンズの音 002
ハンドルを握りながら煙草に火を点け
少しだけ窓を開け煙を逃がす
すべり込んでくる風は春のにおいがする
少し冷たい空気が車中に流れ込み、寝ぼけたアタマが目覚めてくる
手を繋いで歩く幼稚園児
気持ちよさそうに自転車をこぐ高校生
おしゃべりをしているおばあちゃん達
スピーカーから聞こえるのはMr.BIG/To be with you
この歌が大好きだ
この曲を聴くと、何故だか海に沈む太陽が頭に浮かぶ
灰皿に灰を落とし、缶コーヒーを一口含む
バッグの中のケースを手探りで探し当て
危なっかしい運転をしながら蓋をあける
オレンジ色のジェリービーンズを1つ2つと口にほうり込む
健康的じゃないなぁとか考えていたら
赤色に変わった信号機に足止めされた
ゆっくりとブレーキを踏み、色が変わるのを待ちながら3個目をほうり込む
横断歩道を渡る人に目が留まる
大好きだったあの人に似ていた
けれど全くの別人だった
煙草を灰皿にねじ込み、窓を全開にする
目を閉じてあの頃に記憶を辿らせる
たくさんのいろいろな事が断片的にしか出てこない
ずっと昔の出来事のようだ
ほんの少し昔の事なのに
窓の外に目をやると、ずうっと向こうの空で消えてしまいそうな雲が流れていた